NANTO Vegetable Seed Catalog 2018
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「特濃こふき5.6」産地レポートfrom 諸川青果株式会社様(茨城県古河市・青果物地方卸売市場)from 諸川青果株式会社様(茨城県古河市・青果物地方卸売市場)「特濃こふき」導入の経緯。2年目の拡大試作で顕著となった食味の良さ。左から永藤係長、江澤とし江さん、江澤豊さん、辻本ブリーダー。左から永藤係長、江澤とし江さん、江澤豊さん、辻本ブリーダー。南瓜担当のセリ人である永藤政徳係長がその「完熟規格」向けとして高品質の品種を模索していた中、2015年に初めて品種試験として試作されたのが「特濃こふき5.6」でした。一部の農家さんからは従来品種との品種差による栽培上の違和感や、形状の違いによる箱詰めのしにくさも聞かれましたが、栽培面や収量面では従来品種に遜色のない結果が得られました。当初から明らかに能力の差が認められたのはその外観品質。どの農家さんの圃場においても「特濃こふき」は顕著に果皮色が濃く高級感があり、一目見て違いがハッキリ認識されました。2年目となった2016年は複数の農家で数反の面積で「特濃こふき」を拡大試作。ハッキリとその食味に対する評価が確定したのはこの年。江澤豊さん・とし江さんご夫妻は春に南瓜を1haほどの面積で9尺トンネルに3月初旬からの定植で栽培。この年は従来品種とともに「特濃こふき」を1反ほど試作。定植直後は「特濃こふき」の節間が短く、生育不良を疑ったようでしたが、初期の節間が詰まるのは品種特性であることを知り、その後は着果も良く、安心して栽培出来たそうです。従来品種よりも少し草勢が強いが着果は良好で果実肥大も一回り大きくなり、果皮色が濃い。特筆すべきは「特濃こふき」の食味の良さで、これに慣れると従来品種は食べられない位の違いとお褒め頂きました。2番果でも果皮色の濃さは明確で着果数も満足できるものでした。こうした2年目の拡大試作結果を経て、永藤係長は「特濃こふき」の正式採用を決定して頂きました。3年目。「特濃こふき」導入初年度ご近所さん曰く、他の農家から南瓜を持って来られても「特濃こふき以外はお断り状態」。ご近所さん曰く、他の農家から南瓜を持って来られても「特濃こふき以外はお断り状態」。「特濃こふき」はホクホク一辺倒じゃない。「ホクホク&しっとり」の共存。煮物にすると味がしみ込みやすい。「特濃こふき」はホクホク一辺倒じゃない。「ホクホク&しっとり」の共存。煮物にすると味がしみ込みやすい。「特濃こふき」の導入初年度となった2017年は栽培生産者を集めての栽培講習会を開催。そこでは、従来品種と比べ「特濃こふき」はやや草勢が強く、低温時期での初期生育がやや緩慢となること。雄花の開花はやや遅いがその分、根張りが良くなること。元肥は従来品種と同様で良いが、追肥は1番果着果前にツル先部分にしっかりと与え、2番果肥大を促すことが重要であると講義させて頂きました。江澤ご夫妻は2017年の南瓜は全て「特濃こふき」に一本化して頂きました。全面採用に至った理由はずばり「食味の良さ」に惚れて頂いたことです。6月上旬の収穫時期には、前年同様に5~6玉サイズ平均の黒々とした立派な果実を収穫して頂けました。ホクホク一辺倒じゃない。「ホクホク&しっとり」の共存。100ケース中、Mサイズは2箱だけ。それ以外は全て3L~2Lサイズで肥大・揃いバッチリ。100ケース中、Mサイズは2箱だけ。それ以外は全て3L~2Lサイズで肥大・揃いバッチリ。江澤ご夫妻の「特濃こふき」評は、2017年もその食味に対して素晴らしいお言葉を頂戴出来ました。この味は煮物にするとその差が顕著に出て「ホクホク」と「シットリ」の共存が味わえ、味もしみ込みやすい。ご近所さんに「特濃こふき」をお裾分けしたところ、それ以降はそのご近所さんは「特濃こふき以外はお断り状態」だそうです。世間では粉質系南瓜が良いとされていますが、「ホクホク一辺倒」ではダメ。シットリが共存しているから口どけと喉越しが良くなる。もともとベチャベチャした粘質南瓜が好きなお友達もとうとう「特濃こふき」じゃないとダメだと言い始めたそうです。ちなみに豊さんはワザと煮崩れさせてポタージュ状の汁をご飯に掛けて食べるのが大好物。煮物調理法は最初に強火で水を沸騰させて、その後は中火で5分煮ると、ほぼ煮崩れせずに完成するそうです。また、肝心の収量性に対しても高評価を頂いており、この日収穫の1番果は100ケース中、Mサイズが2箱だけでそれ以外は全て3L~2Lサイズ(箱5~6玉)。作を通じて肥大と揃いがバッチリだったとありがたいお言葉を頂けました。次年度に向けてその他、私が見たり、農家の方々からお聞きした「特濃こふき」の栽培特性に対するポイントは次のとおりとなります。●雌花開花が従来品種よりも遅い。(低節位着果せずに済むとも言えます。)●葉柄が長いので風の影響を受けやすい。●従来品種よりも、うどんこ病の発生が少ない(発病が遅い)。●果皮色が黒い分、日焼けの影響を受けやすい。2017年の春から初夏にかけては茨城県は特に酷い乾燥傾向で、2番果の生育に必要な草勢を維持することが出来ず、品種問わず2番果の出荷量が極めて少ない年となりました。江澤さんの「特濃こふき」も同様に2番果に関してはほとんど収穫できないという残念な結果でした。ブリーダーとしては従来品種よりもやや草勢が強い「特濃こふき」に十分な追肥を与えることで、従来以上の2番果収量を得られるようにと、現地巡回でも農家さんにお話しさせて頂いていましたが、異常な気象条件の中では無力さを感じさせられる結果でした。2番果の収量確保は、次年度の最重要課題となります。南瓜作付面積減少に歯止めを。国産南瓜の単価は近年高値で安定傾向にありますが、その一方で全国的な栽培面積の減少が顕著です。南瓜はキャベツやレタスなどの葉菜類と比べるとどうしても肉体的な作業負担が大きく、農家の高齢化がダイレクトに面積減少に繋がっています。諸川青果さんでも同様で、永藤係長曰く、南瓜農家戸数が毎年減少しており、1軒あたりの面積も縮小傾向との事です。そんな中、2017年の6月に諸川青果さんで販売された「特濃こふき」は、他の南瓜と比べてもかなりの高値水準で取り扱って頂けました。南瓜農家さんが丁寧な仕事で自信を持って出荷した「特濃こふき」を、諸川青果さんが確信を持って販売して下さり、出荷先でもその価値を認めて頂けたことはまさにブリーダー冥利に尽きます。これは、農家さん、セリ人さん、そして出荷先のお客様がそれぞれ努力と協調と連携を重ねて頂いた結果の賜物です。また来年以降も永年に渡って、素晴らしい南瓜が産地から供給されるべく、産地が潤い、流通先や食卓でも喜ばれるための育種を続けていきたいと思います。(ナント種苗 南瓜育種担当 辻本慎太郎)古河市今回は「特濃こふき5.6」が新発売となった2017年から導入して頂いた茨城県古河市の青果物地方卸売市場の諸川青果㈱さんをナント種苗の南瓜開発担当ブリーダー・辻本慎太郎が訪問。南瓜担当セリ人の永藤政徳係長と南瓜生産者の江澤豊・とし江ご夫妻からお話をお伺いしました。6/7茨城県古河市にて撮影。3月初旬定植で交配後50日を経て、6/4収穫された江澤さんの「特濃こふき」。38

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